四十肩・
五十肩

四十肩・五十肩の原因は、現在のところ明確になっていないといわれています。
しかし、肩周辺の組織に強い炎症を起こすことで生じると考えられています。

なぜ炎症の症状が起こってしまうのでしょうか。
そのおもな原因としては次のことが考えられます。

 

●血液循環の悪化

血液の循環が悪化していると損傷した組織への栄養や酸素供給が十分に行われず、突然の炎症に繋がることが考えられます。

肩周辺の血行が悪くなる要因には、次のことが挙げられます。

・運動不足
・不良姿勢（猫背、巻き肩）
・長時間の同じ姿勢
・加齢

肩関節は可動域が広くなっている代わりに、関節の固定を周辺の筋肉や靭帯などに大きく依存しているといわれています。
そのため「腕を上げる」「腕を後ろに捻る」「同じ姿勢をキープする」といった何気ない日常動作でも、負担が蓄積しやすくなることが考えられます。

 

●肩の酷使、肩や腕への負荷の蓄積

スポーツや肉体労働などで肩を使いすぎている場合、肩や腕への負荷の蓄積によって炎症を起こす場合があります。

 

●ケガの影響

脱臼や骨折など、過去のケガが完治していないことで炎症を起こす場合があります。
肩の酷使やケガの影響によっては、若い方でも四十肩・五十肩の症状がみられることがあります。

肩こりは、肩周辺の緊張や循環の低下による「筋疲労の蓄積」が原因に考えられます。
そのため、炎症が生じる四十肩・五十肩とは異なる症状といわれています。

●急性期

・肩に激痛が走り、動けなくなるほどの痛みが生じる
・痛みが酷く、寝付けない場合がある
・痛みで夜に目が覚める

四十肩・五十肩の特徴的な症状として、夜中に痛みが強くなる「夜間痛」が挙げられます。
原因は特定できていないといわれていますが、夜間には副交感神経が優位になることが、痛みに影響を与えているのではないかと考えられています。

 

●慢性期

・鈍い痛みがつづく

・組織の癒着が生じ、肩関節の可動域が狭まる

急性期の激しい痛みから「鈍い痛み」「突っ張ったような痛み」へと移行していきます。
四十肩・五十肩では、おもに挙上や捻りの動作に制限が生まれるといわれています。

・挙上時痛

腕を上げた際の痛みです。腕が地面と水平以上に上がらないことがあります。

・結髪動作、結帯動作時の痛み

髪を結う動作、帯を後ろで結ぶような動作が痛みで制限されやすい傾向にあります。

 

●回復期

・身体を動かしても痛みが現れることが少ない
・無理に動かすと痛みが再発する場合がある

肩こりでも、筋肉のこりが強まると痛みを覚えることがあります。
しかし、四十肩・五十肩にみられるような夜間痛や可動域制限は肩こりでは生じないといわれています。

●急性期

・安静にする

損傷を悪化させないよう、痛みが出る動作はなるべく避けるようにしましょう。

・冷却する

痛みや熱感が強く出ている場合、氷のうや保冷剤を使って患部を冷却しましょう。

夜間痛がつらい場合は肩の下に枕を入れる、痛みがあるほうの肩を上にして横向きで寝ることで痛みの緩和が期待できます。

 

●慢性期

・患部をホットパックなどで温める

炎症がおさまってきたら、今度は患部をホットパックや蒸しタオルなどで温めるようにしましょう。
温めることで患部の緊張が緩和し、血行が促進されることで症状の早期改善が期待できます。

・無理のない程度に肩や腕を動かしていく

ストレッチや体操など、痛みの出ない範囲で肩や腕を動かすようにしましょう。
シャワー後や入浴後など、身体が温まっているタイミングで行うことをおすすめします。

慢性期に入っても痛みはしばらく残りますが、安静にしすぎると拘縮が悪化し、回復に余計時間がかかってしまうと考えられています。

 

●回復期

・しっかりと肩を動かす

痛みは徐々に取れてきますが、つっぱり感が多少残ることがあります。
ストレッチや体操などで、根気強く肩を動かしていきましょう。

●ストレッチ

日常的に肩まわりをストレッチして、血流をよくしておきましょう。

・肩甲骨のストレッチ

両腕を上にまっすぐ伸ばし、指を組みます。
その状態から、両腕を左右に倒すことで、肩甲骨から脇腹にかけてのストレッチができます。

・胸を伸ばすストレッチ

壁に手をついて、胸を開くようにストレッチしましょう。
胸の筋肉を伸ばすと、巻き肩の予防にも効果が期待できます。

・頭を横に倒すストレッチ

頭を横にゆっくり倒し、首筋から肩にかけて伸ばしましょう。
横に倒す際、頭を前や後ろに傾けることで、首の前側、後ろ側と広い範囲をストレッチできます。

 

●肩甲骨を動かす体操

タオルの両端を持ち、バンザイします。
そこから、頭の後ろを通過するようにタオルを下におろします。
タオルの上げ下げする体操を、10回を目安に繰り返しましょう。

 

●姿勢を正す

猫背の姿勢など、背中の丸まった姿勢は肩まわりの緊張を強め、血行も悪くなってしまいます。
肩甲骨の上に頭を乗せるイメージで、背中を伸ばした姿勢を普段から意識しましょう。

四十肩・五十肩には改善まで3つの段階に分けられます。

炎症期、拘縮期、回復期と移行していきますが、拘縮期にしっかりとしたマッサージやセルフケアを行うことにより症状の改善が期待できます。

一度発症してしまうと半年から年単位で症状をみていかなければならないこともあります。

炎症期ではアイシングや安静をメインに行い、当院でも軽擦や電気ケアのみにとどめ、炎症を抑えることから始めていきます。

その後痛みがおさまってきたら、拘縮期といって筋肉が固まる時期に入るので、リハビリ・マッスルアプローチ・ストレッチ・温罨法（おんあんぽう）などの施術を行います。
筋肉の動きや血液の循環にアプローチすることで、改善が早くなることが見込めます。

回復期では肩の可動域の改善を目指し、拘縮期よりハードなトレーニングやストレッチを行います。